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雪駄は一説によると、室町時代の末頃から誕生、茶人として名高い千利休の考案といわれている。

草履で雪の上や湿気の多い路を歩いても、 水気が表にしみてこないようにするためや、 かかとの部分が傷むのを防ぐために補強として裏底に皮をはるようになった草履の進化系 の履物だ。

そんな雪駄が400年以上の時を越えて今現在のファッションにおける 一つのスタイルとして定着しつつあるのだ。

その仕掛け人、奈良県は上牧町にある株式会社サカガワ。

雪駄の製造は祖父の代から始まって父である2代目が昭和34年独立創業、 3代目阪川隆信氏により新たな雪駄の時代を迎えた。

もともと株式会社サカガワがある上牧町、三郷町地区は、 農家の副業で革細工の職人が多く、鼻緒作りが盛んだったため 雪駄の製造も含め一時期は和履き製品の全国シェア約90%を占めていた日本有数の集積地だった。

しかし洋装が広まり衰退。

旅館や神社仏閣等で使用される一般的な雪駄を作り続けていた株式会社サカガワも 同じ岐路に立たされていた。

しかし、2008年頃より阪川隆信氏により伝統技術をベースに地域資源の掘り起こしも兼ね 新たな雪駄のブランド「大和工房」を立ち上げる。

昔ながらに留まるのでなく、常に流行、取引業者との情報に耳を傾け、ファッション的センスを 取り入れ、お客さんの声を拾って、使い心地も常に改良していった。

日本国内のあらゆる素材にも着目し、現代のファッションに合うよう、形や履き心地も見直した。

各ファッションブランドやスポーツ団体など、色々な業界とのコラボも広めていった。

株式会社サカガワが製造する雪駄の特徴として鼻緒の位置がある。

通常雪駄には左右が無くどちらも鼻緒が着いている位置が真ん中で一緒。

しかし、鼻緒の位置をまるでビーチサンダルのように左右にずらす事で 雪駄独特の小指が雪駄からはみ出る違和感が無くなり、より現代の ファッションに受け入れられやすくなった。

その他にも、ファッション性だけでなく実用性の履きやすさ、履き心地にこだわり、 厚みやクッション性も改良を重ね一般的な雪駄とは比べ物にならないほど 疲れにくく、脱げにくい形状を実現した。

このような視点は同じ業界の中には無く、まさに革命だった。

それによって、素足の健康ブーム、和物ブームの追い風もあり、 国内はもとより海外にも受けが良くなり、かなり販路が広がった。

しかし、失敗やリスクもあると言う。

新しい素材、新しい技術はやはり昔ながらの技術を全うする職人には なかなか受け入れられない。

それに、ただでさえ、縮小し少なくなった職人に負担はかけられない。

あらゆるリスクや失敗はすべて請け負わ無ければ進まないのだ。

そんなリスクを負ってまでも挑戦する理由はただ一つ。

業界の衰退による職人離れや、職人の高齢化の問題は業界自体の存続につながる。

こうして挑戦し続ける事は、雪駄の需要を広めることばかりでなく、職人の雇用、後継者を 育て、業界全体を盛り上げていくサイクルも築いていけるからである。

株式会社サカガワの雪駄は日本の職人が一つ一つ40以上の工程を経て完成する ハンドメイドの製品だ。

このご時世で海外生産や機械生産に切り替えないのは、雪駄自体が それぞれ細やかな採寸や微妙な工程の違いで大量生産やオートメーション化に 適しておらず、手で細やかに対応した方が生産性が良い。

言わば、必然的なハンドメイド製品なのだ。

簡略化を避け、雪駄という伝統もしっかり守り続けながら進化するこだわりの逸品である。

阪川隆信氏は言う、トラディッショナル(伝統)はトレンドにしてこそ守られ続いてゆく。

今も昔も残る伝統は常に時代に合わせて改良、進化を遂げてこそ、愛され続ける。

だから、これで完成というのは無くこれからも進化し続ける。

雪駄への飽くなき追求は終わらない。

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  • レビュー件数:1件
  • レビュー平均:5(5点満点)

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